ターンテーブルは下図のように2Dのベクターイラストをくるっと回して別角度を自動生成できる、Illustratorの生成AI機能です。
ターンテーブルボタンを押してスライダーをドラッグするだけで、正面・斜め・横向き…と平面イラストの別ビューを作れるので誰でも2Dイラストを3Dイラストのように編集できるのが特徴です。
生成AIが見えない部分を推測して補完してくれるため、作り直しすることなく角度を変えたり、別バリエーションの素材を作ることができ、作業効率が大幅にUPしそうです。
ターンテーブルの使い方(3D化したように別角度を生成)
ターンテーブルの使い方を図解付きでわかりやすく解説します。
ターンテーブルの操作はとってもシンプル!スライダーで角度調整するだけなので誰でも簡単に使うことができます。
「ターンテーブル」をクリック
オブジェクトをクリックしたら「ターンテーブル」をクリックします。

オブジェクト
→ターンテーブル
またはプロパティパネル、コントロールバーからもアクセス可能です。
スライダーをドラッグして角度を変更
ターンテーブルをクリックすると生成処理が行われるため、少し待つ必要があります。

ターンテーブル化が終了したらコンテキストタスクバーにターンテーブルの編集バーが表示されるのでスライダーを動かしてみましょう。
スライダーを左右に移動させると横方向に角度を変更することができ、スライダー横の上下の矢印キーを押すことで「斜め上から」「斜め下から」の縦方向の角度に変更することもできます。
表示を挿入をクリックで簡単複製

スライダー横にある表示を挿入をクリックすることで変更した回転図を複製することができます。
バリエーションを並べる場合は便利なのでこのボタンを押して複製していきましょう。角度ごとに自動で横に並びます。
再び角度を変更したい場合・角度を確定したい場合
ターンテーブル機能は一度スライダーが閉じてしまっても、再びターンテーブルボタンをクリックすることで再表示することができます。
ただし、一度でもグループ化解除を行うと通常オブジェクト扱いになるため、再び角度を変えるためには再度ターンテーブルの生成を行う必要があります。
逆に、もう角度を変える必要がなく、確定したいという場合は一度グループ解除をし、再度グループ化することでターンテーブルを解除し通常オブジェクト化することができます。
ターンテーブルでできること、使用例・活用例
ターンテーブルでできることや使用例を紹介します。
2Dのまま3Dのように角度違いを生成
ターンテーブルは、2Dベクターをまるで3Dオブジェクトのようにクルっと回して、別角度の2Dベクターとして出力できる機能です。
描き直しなしで向きだけを変えられるのが魅力。

元の作風や形状のエッセンスはそのままキープされるので、トーンやラインの雰囲気が崩れにくく、量産後の微調整も最小限で済みます。
キャラクターのターンアラウンド
正面1枚のベクターオブジェクトから、横・斜め・後ろといったビューをまとめて用意できます。

キャラ表づくりの初速が上がり、プロトタイプ段階の検証や差し戻しにも素早く対応可能。デザインの統一感を保ちながら、バリエーション展開を短時間で進められます。
シンプルなイラストであればそのまま使用できる場合もありますが、ある程度ディテールが細かいイラストの場合は完全版として使用するには細部のパスが甘いのでたたき台用などに使用するのがおすすめです。
2Dアニメ/モーショングラフィックス

動きに合わせた中間角度の作画を時短できます。キーとなるポーズから必要な向きを量産し、テイストは統一のまま。
コンテ出し→ラフムーブ→本仕上げの流れで“角度の穴埋め”に強く、制作のボトルネックになりがちな素材準備の負担を大きく減らせます。
特にシンプルなベクターアートの場合、少しの角度変更であればポン出しで使える場合も多いので実務でも利用できそうです。
製品図・テクニカルイラスト

プレゼン資料やマニュアルで求められる斜視図・側面図などを、描き直さず視点切り替えで即座に生成。
検討段階の案出しや、仕様変更への追従がスムーズになり、提案スピードが一段とアップ。
寸法や形状の正確さは高くないため、最終的な寸法・意匠の詰めは手作業で仕上げる必要はありますが、サンプルや打ち合わせ用のイメージ作成の場合は作業時間を大幅に短縮できます。
ターンテーブルの注意点・惜しい点
ターンテーブルはかなり便利な機能ですが、あくまでも生成物なので完璧とはいきません。
主に実務で使う際に注意してほしい点について解説します。
色・線が完全には保てないことがある
スウォッチや特色が正確に保持されない、ブラシストロークがシェイプ化される、数値的な色ズレが起きることがあり、元のベクターイラストの情報と異なる角度のイラストが生成される場合があります。
入稿前提の案件では、生成後に必ず色再現の再チェック(プロファイル・特色の再割り当て/特色置き換えの確認)を必ず行いましょう。また、必要に応じて元データのパス編集や再着色を見越して見積もりなどをしておくと良いでしょう。
結果の安定性はアート次第
シルエットの明確さや形状の一貫性で補完精度が大きく変わります。
フラットなイラストは奥行きが推測しにくいため、うまくいかないことが多いです。


細部が散漫だったり、背景や装飾が多いと破綻しやすい傾向。
基本は生成 → 微修正 → 再生成のサイクルで、狙いの角度に近づけていく使い方が狙い通りにいきやすいです。
ベータ特有の不具合・処理時間
ベータ機能ということもあり、フリーズやクラッシュ、生成に時間がかかる場面があります。
重要な作業では逐次保存し、複雑なオブジェクトに対して使用する際は別ファイルとして行うなど、負荷を下げる工夫を行うといいかもしれません。
360°完全対応ではなく、背面の推測には限界がある
ターンテーブルは見えていない面を推測しますが、完全な360°の連続回転ができるわけではありません。
360°回転して自由に角度変更できる感覚で使用できますが、実は変更可能な角度は決まっており全部で51通りとなっています。

- 横軸:-120°〜120°の範囲で15°刻み
- 縦軸:-45°〜45°の範囲で45°刻み
また、裏面の完全再現までは難しいので過度に期待しすぎないようにしましょう。
特に非対称デザインや内部構造があるモチーフは破綻しやすく、背面だけは別途描くなどのハイブリッド運用を前提にしましょう。
テキスト/ロゴ/幾何学図形は崩れやすい
細い文字や精密なロゴ、厳密な幾何学形状は、角度を変えた際にエッジがにじんだり比率が狂うことがあります。
曲線などが多いラフなイラストの場合は気にならないかもしれませんが、アイコンのような幾何学的な図形がベースとなっているイラストなどは崩れが気になる場合があります。

上記はソファのベクターイラストに対してターンテーブルで角度を変えたものですが、ボタン止めのタフティング部分の仕上がりが荒くなっているのが少し目立ちます。

また、上図のように文字が含まれるイラストはうまく行きにくいです。文字も最低限は生成してくれますが、「見えない部分」に関しては大きく崩壊してしまうので手直しが必須となります。
文字やロゴなど幾何学的な図形はあとから手動で修正するのが良いでしょう。
印刷・カラーマネジメント上のリスク
生成の過程で特色→プロセス化やICCの想定外変換が入り込む可能性があります。
入稿前はスウォッチの整理・特色の再指定を確認しておきましょう。

ターンテーブルがうまくできない場合の対処法とよくある質問
きれいに別角度が生成できない
主役以外のオブジェクトや複雑な背景は一旦オフに。
はっきりした輪郭線と明快なシルエットを準備すると、ターンテーブルの補完が安定します。陰影や質感よりも、まずは形状の情報量を整理してからターンテーブルを使用してみてください。v
- 主役だけを選択:背景・飾りは一旦オフ(生成範囲を絞る)
- 輪郭をはっきり:主要面は閉じたパスで、線・塗りを整理
- 対称物は中心合わせ:左右非対称は破綻しやすい
ターンテーブルが表示されない
ターンテーブルのボタンが表示されないのは下記が主な原因です。
- オブジェクトが選択されていない
- プロパティパネルが表示されていない
メニューバーのオブジェクト
→ターンテーブル
からもアクセスが可能です。

もし、オブジェクトメニュー内に「ターンテーブル」の表示がない場合はソフト自体に問題があります。
Illustratorベータ版のバージョンが29.9.14以上になっているか確認してください。
もし、バージョンが正しい場合はCreative Cloudの管理アプリで一度アカウントからログアウトし、再度ログインすることで使用可能になる場合があります。
ターンテーブルの編集バーが表示されない
ターンテーブルの角度を変更するための編集バーが表示されない場合はコンテキストタスクバーが表示されていないのが原因です。
以下の手順でコンテキストタスクバーにチェックを入れてください。

- ウィンドウ
- コンテキストタスクバー
コンテキストタスクバーが表示されているにも関わらず編集バーが表示されない場合はIllustratorの再起動をためしてみてください。
顔のパーツ位置がズレる
ガイドで中心線・目鼻の基準を可視化し、基準からはみ出す装飾は一時非表示。
ロゴ・文字がにじむ
生成後に元データへ差し替え(アウトライン文字は特に後差し推奨)。
配色が濁る/特色が変わる
スウォッチの再割当てと特色の再指定をルール化。
細部が破綻している
細部まで完全に補完できるわけではないので、パーツを一度まとめて単純化してから生成、その後に細部を手動で描き足すときれいに仕上がります。
処理が重い・フリーズして落ちる
不要レイヤーやエフェクトをOFF、要素をグループ化してから生成してみてください。
また、パス数が非常に多い複雑なベクターアートは負荷が大きくなるためシンプルなベクターアートで使用するのがおすすめです。
生成AIのクレジットが必要?
ターンテーブルは生成クレジットを消費します。ターンテーブルを1回クリックする度に生成クレジットが1消費されるので最小プランの場合はすぐに生成クレジットが切れてしまうかもしれません。
生成クレジットについては以下の記事をご覧ください。

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