デザイン業をやっていると誰もが経験する、あいまいなふわっとしたリクエスト
下記のようなあいまいな要望にどう答えていいか迷ったこと、ありますよね。
- 可愛くして
- おしゃれにして
- かっこよくして
- 高級感を出して
- 洗練された印象にして
- 迫力がある感じにして
- ビジネスっぽい感じにして
このような具体的でないリクエストに対して自分なりにデザインしてみたら「そうじゃない」と言われたり「もっとオシャレにして」なんて言われてしまったり…
そして、言葉も曖昧なため「かわいいデザイン」と言っても世の中にはいろいろな「かわいい」があります。
本記事ではそんな曖昧な言葉からデザインする考え方のコツについて解説します。
かわいいのイメージは人それぞれ、曖昧な表現をイメージ化するコツ
かわいい、おしゃれ、かっこいい等のあいまいな言葉、よく使われますが自分なりに作ったものが相手のイメージしたものとは限りません。
テーマは揃っていてもテイストによって仕上がりイメージは大きく異なります。
曖昧な言葉をデザイン化する方法を学んでおけば「おまかせします」「いい感じにしてください」など丸投げしてくる顧客に対しても、曖昧な言葉を具体的なイメージにして提案することで満足してもらえるデザインを作ることができます。
曖昧なイメージを具体化するためのコツを解説します。
イメージに合うフォントを取り入れる
フォントを変更するだけでイメージがガラッと変化します。
たとえば太いゴシック体は力強い印象を与えますが、繊細な印象はありません。繊細な印象を与えたい場合は明朝体や細いウエイトを使用するといった具合にイメージによってフォントを使い分ける必要があります。
キーワードに最適なフォントを選びましょう。
最適なフォントをダウンロードしよう
無料または低コストなおすすめフォントサービスは以下の2つ
AdobeユーザーならAdobe Fontsに収録されているフォントメーカーが提供する有料フォントが使い放題です。
Adobe Fonts内にあるすべてのフォントを追加料金なしで使用することができます。
Adobeソフトを契約していない人は無料で商用利用できるフォントもたくさんあるのでイメージに合うフォントを探してみてください。
イメージに合う色を取り入れる
与えたいイメージによって最適な色は異なります。たとえばポップな印象を与えたい場合は彩度・明度の高い「黄色」「ピンク」などが適していますが、シックな印象を与えたい場合は彩度・明度が低い「紺色」「深緑」などの落ち着いた色が適しています。
色のトーンによってかわいらしさ、かっこよさは大きく変化します。与えたい印象に合わせて色のトーンを変えることでよりキーワードのイメージに近づくので適した色を使用しましょう。
トーン以外にも季節やイベントものは季節のイメージカラーを取り入れるとそれっぽくなりイメージとの乖離を防ぐことができます。
デザイン要素はキーワードのマインドマップを作るとイメージしやすい
顧客の要望する言葉を多くヒアリングしておき、キーワードからマインドマップを作っていくとアイディアがでやすくなります。
思いついたキーワードに取り入れられそうなデザインイメージを付け加えていくことでイメージが広がり、キーワードの印象に近いテイストを取り入れることができます。
サクッとキーワードの具体化を行いたい場合は後述する書籍を使用するのがおすすめです。
デザインテイスト以外の重要な要素
デザインで重要になるのは「曖昧なイメージの実現」だけではありません。
- ターゲット
- トレンド
- シーン
これらの要素によってデザインを変化させていく必要があります。
ターゲットによって刺さるデザインは異なる
小さな子供とお年寄りでは興味を引くデザインやかわいい、かっこいいといったふわっとイメージは異なります。
男性と女性、趣味とビジネス、興味の無い人向け、などなど…誰に伝えたいものなのかによってデザインを変えるのは重要。
単純にクライアントが好きなデザインではなく、そのデザインの「目的」を考えましょう。
トレンドによってイメージは変わる
90年代の「かわいい」「おしゃれ」と2020年の「かわいい」「おしゃれ」は全くの別物になります。
共通する部分はあるものの、現在のトレンドを意識して取り入れていくことは非常に重要。
ターゲットによってはあえて古いデザインを使うということも選択肢に入りますが、基本的にはトレンドを抑えたデザインのほうが洗練された印象を与えるのでトレンドは抑えておきたいところ。
利用シーンによるデザインも重要
「店頭のポスター」と「駅のポスター」では役割が大きく異なります。
広告デザインでは「Web広告」「雑誌広告」「街頭広告」「新聞広告」などなど、媒体に応じて最適なデザインは異なります。
「街頭広告なので遠目からでも目立つ感じにする」など、利用シーンをよく考えておくことも重要です。
色彩学や心理学はイメージを伝えるのに適した手段
デザインを形にする際に役立つのが「色彩学」や「心理学」です。
色彩効果や心理効果をしっかり理解しておくことで「なぜその色を選んだのか」「なぜこのデザインなのか」を答えることができるので説得力が増します。
色による心理効果
色には視覚的なイメージだけではなく、五感にまで作用する力があります。
色彩心理学は広告には欠かせないデザインスキルの一つ。
効果的なデザインを行えるよう、概要だけでも覚えておくと役立ちますので下記の記事を参考にしてみてください。
デザインに使える心理学
デザインに使える心理学は色だけではありません。
イメージ通りのデザインというだけでなく、広告効果のあるデザインという本来の役目を果たすことも非常に重要。
実はデザインに取り入れられる心理学にはクレショフ効果、アンカリング効果など有名なものからマイナーなものまで多数存在しています。
顧客のイメージを具体化できるようにデザインのひきだしを増やそう
曖昧な言葉からデザインするためには「デザインのひきだし」を増やすことが重要です。
まったくデザインに触れてこなかった人がいきなり良いデザインをするのは無理ですよね。ソフトが使えるだけでは良いデザインを作ることはできません。
たくさんのデザインを見て学ぶというのは初心者もベテランも同じ、常に勉強が必要です。
初心者もベテランも重要なデザインのひきだし
プロのデザイナーも「可愛くしてください」「かっこよくしてください」などと言われた場合は過去に作ったものや今までに見た・作ったデザインから要素を取り入れデザインしています。
顧客の要望に応えることができるデザイナーはデザインのひきだしが多いんです。
作家が語彙を増やしていくように、デザイナーはデザインのひきだしを増やしていく必要があります。
初心者は見ただけではデザインのひきだしが増えない
初心者は良いデザインを見ただけではデザインのひきだしを増やすことはできません。
実際に作ってみることも大事ですが「なぜこのデザインにしたのか」という部分を理解する必要があります。
かわいいデザインを作りたい場合は「かわいい」を細分化し「かわいく見える要素」を具体化し、デザインに取り入れることが求められます。
言葉をイメージに変えるには具体化の参考になる本がおすすめ
デザインを見て自分で考えてみることも重要ですが、初心者のうちはどのように見ればよいかわかりにくいと思います。
そんなときは言葉をイメージ化を学べる書籍がおすすめです。「かわいい」「カジュアル」「エレガント」などふわっとしたキーワードからデザインに落とし込むための方法やコツを解説してくれているので参考書としてだけではなく教科書としても機能するので持っておいて損はありません。
キーワードをデザインに落とし込むのに適した本を2冊紹介します。
可愛くしてください!ふわっとしたデザインリクエストに応える本」
ソシムより出版されている『可愛くしてください!ふわっとしたデザインリクエストに応える本』はふわっとしたデザインイメージを具体化する際に役立ちます。
本書は以下のようなふわっとしたリクエストをしてくるクライアントの要望に応えるのに最適な本になっています。
- 可愛くして
- おしゃれにして
- かっこよくして
- 高級感を出して
- ナチュラルな感じに
- カジュアルな感じに
- ビジネスでいい感じに
本書を携えておくだけでこれらの要望にバッチリ対応できるようになります。
ただのデザインの参考書としてだけでなく、デザインの勉強にも業務にも役立つ良書だったので詳しく紹介していきますね。
可愛くしてください!ふわっとしたデザインリクエストに応える本
Power Design inc著
発売日:2020/11/16
- 目次わけされているので探しやすい
- 色、モチーフ、フォントを紹介
- もう少し○○してほしいにも対応
ふわっとイメージで目次わけされているので使いやすい
- かわいいデザイン
- おしゃれなデザイン
- 高級感のあるデザイン
- ナチュラルなデザイン
- カジュアルなデザイン
- かっこいいデザイン
- ビジネスライクなデザイン
目次は上記の7種類の「大雑把なイメージ」で構成されています。
例えばその中の「高級感」のページを開けば下記のようにテイスト違いの具体例に分かれています。
- 粋な感じ
- リッチな感じ
- パーティー風
- クラシカルな感じ
- ハイクラスな感じ
大雑把なイメージを細分化することでより具体的なイメージに近づけることが可能。
例えば「粋な感じ」はこのようなイメージです。
色、モチーフ、フォントを紹介
「可愛い感じ」→「フェミニンな感じ」と索引を引くと上記のように作り方を解説してくれます。
- イメージの色をカラーコード付きで紹介
- モチーフやテクスチャーの紹介
- フォントの紹介
いたれりつくせりですね。ここで紹介されているフォントはすべてAdobe Fontsで利用可能なものなので全く同じフォントを使えばOK
赤字修正「もっと○○してください」にも対応
いざ作成したデザインをクライアントに見せた際に言われる下記のような赤字修正、あるあるですよね。
- もう少し華やかに
- もう少し大人っぽく
- もう少しクールに
- もう少し楽しそうに
- もう少し重厚感出して
- もう少し上品な印象に
- もう少し動き出して
- もう少し季節感出して
- もう少し気楽な感じに
- もう少し安定感出して
- もう少し特別感を出して
- もう少し開放感を出して
- もう少しユニセックスに
このような要望に対処するためのコツもバッチリ記載されています。
例えば「もう少し動きを出してほしい」では実際の具体例とともに解決アイディアをBeforeAfterで紹介してくれています。
- 要素の一部を見切れさせる
- 文字のジャンプ率を上げてメリハリUP
- 対角線上に要素を配置して動きと安定感を両立
クライアントの要望に答えるコツがわかりやすく解説されているので初心者デザイナーは見るだけでも参考になるレベル。
可愛くしてください!ふわっとしたデザインリクエストに応える本は口コミも良好
まだ発売して間もないですが書店からは売り切れ続出、ネットの口コミ評価もめちゃくちゃ良いです。
よくある口コミは下記の通り
- 迷走しがちなイメージを固めるのに便利
- クライアントや第三者とのイメージの擦り合わせにかなり便利
- 文字やあしらいの形に悩んだ時にどんな形にしたらどんな印象になるか分かるので参考になる
この記事執筆時のアマゾン評価は100%★5と高評価。個人的な感想としてもこの口コミ評価は納得ですね。
まぁフルカラーで参考例たくさん、全223ページとボリュームもあるのでまず後悔はしません。
今回紹介した可愛くしてください!ふわっとしたデザインリクエストに応える本はデザインのひきだしを増やしてくれる良書です。ベテランでもデザインのかてになることでしょう。
言葉をイメージに変える ひらめきデザイン引き出し帖
もう一冊、キーワードからデザインする際に役立つ良書「言葉をイメージに変える ひらめきデザイン引き出し帖」ご紹介します。
言葉をイメージに変える ひらめきデザイン引き出し帖
pasto 著
発売日:2022/9/13
キーワードからデザインの正解を見つけるビジュアル辞典
ひらめきデザイン引き出し帖は「キーワード」からデザインのヒントを見つけるビジュアル辞典です。
キーワードごとに配色やフォント選びのコツ、デザインの実例などが掲載されているためデザインの方向性に迷ったときやアイディアが出てこないときに役立ちます。
42のメインキーワードと182のサブキーワードから要望通りのデザインを見つける
現場で頻出するメインキーワード48個と、それに連なるサブキーワード182個のデザインのコツが収録されており、キーワードやビジュアルからイメージ通りのテイストを調べることができます。
索引から顧客の希望するキーワードを調べて向いているフォントや色を調べたり、ビジュアルからイメージ似合いそうなキーワードを見つけたりすることができます。
曖昧な言葉からデザインしていく際は本があるとイメージをつかみやすくなるのでぜひ試してみてください!
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