Photoshop 2026に登場した「生成アップスケール」は、生成AIを使い解像度を上げる機能です。
低解像度でしか手元にない写真、Webから取得した小さな画像、AIで作ったけど拡大したら粗くなってしまうイラストなどの素材を高解像度化することができます。
本記事では生成アップスケールの使い方・仕上がりの特徴・注意点・他の解像度アップ機能との違いを図解付きでわかりやすく解説します。
生成アップスケールの使い方

生成アップスケールを使用する具体的手順を解説します。
Photoshop 2026を起動し、高解像度化したい低解像度の画像を開きます。
ファイル→開く、または、画像ファイルをPhotoshopにD&Dをして画像を挿入ししてください。

以下の手順で生成アップスケールを使用可能です。
イメージ生成アップスケール

アップスケールに使うAIモデルを選択します。現在選べるのは以下の3つ。
- Fireflyアップスケーラー:Adobe純正。自然な質感を保ったまま解像度を上げる標準モデル
- Topaz Gigapixel:よりディテールを残したい、シャープにしたい場合に使う高精細モデル。人物写真や風景写真の大型出力向け
- Topaz Bloom:AI画像やイラストなど、元の画像に細部がほとんどないときに「それらしいディテール」を追加したい時に使う創造性重視モデル

表示されたダイアログで、2倍または4倍の拡大倍率を選びます。倍率を変えると最終的なピクセルサイズが表示されます。
2xでは解像度が2倍になり、4xは4倍になります。(生成倍率を上げると生成クレジットの消費が増えます)

アップスケールボタンを押すとクラウド側で生成処理が開始されます。
画像サイズや選んだモデルによっては数十秒〜数分かかることがあります。処理が終わると自動で新規ドキュメントとして開きます。
アドビモデルは通常の生成クレジットの使用で済みますが、パートナーモデルはプレミアム生成クレジットを使用します。(>>生成クレジットの詳細については後述)

元画像とは別タブの新規ドキュメントとして、アップスケール済みのファイルが表示されます。
中には「通常拡大しただけのレイヤー(元画像)」と「生成AIが細部を補完したレイヤー」の2つが入り、表示を切り替えて違いを比較できます。必要ならマスクで2つをなじませて最適なバランスに仕上げてください。
生成アップスケールの効果
生成アップスケールは「拡大したのにボケない」だけでなく、「なかった細部をAIが描いてくれる」点が特徴です。具体的には以下のような効果があります。
解像度の大幅な引き上げ

1回で最大4倍まで拡大でき、実質16倍のピクセル数になります。
単純な解像度で見た場合、ポスターや4K表示にも十分使えるサイズまで解像度を上げることができます。
自然なディテール生成


低解像度で潰れていた髪の毛、服の布地、背景の木や建物の細部などをAIが推測して描き足します。
単純なバイキュービックのような「ぼやけたまま大きくなる」拡大ではなく、「最初から高解像度で撮ったような」見え方に寄せてくれます。
ノイズやボケの軽減

アップスケールと一緒にノイズもある程度整えてくれるので、拡大後にざらつきが目立つケースが減ります。
古いスマホ写真やWebから入手した小さな画像でも、印象がかなり良くなります。
モデルごとの最適化

Fireflyは「自然でやりすぎない」方向、Gigapixelは「ディテールをはっきり」、Bloomは「足りないところをがっつり生成で補う」方向と、それぞれ性格が違うので、写真・イラスト・AI画像など用途に合わせて仕上がりをコントロールできます。
Photoshop内で作業が完結する
これまで外部ツールに任せていたレベルのアップスケールを、Photoshopだけでできるようになったのが2026版の大きなポイントです。
書き出し・再読み込みの手間がなく、元データにすぐ合成・レタッチできます。
生成アップスケールで使用する生成クレジット詳細
生成アップスケールは「Firefly 生成クレジット」というAdobeのサブスクに付属される枠を使って動作します。
ここを理解しておかないと「突然使えなくなった」という事態になりがちです。
Firefly 生成クレジットの基本ルール
生成クレジットについて抑えておくべき要点は以下の4つ。
- Creative Cloudの契約プランに応じて、毎月一定数の生成クレジットが自動で付与
- 付与されたクレジットは翌月に繰り越せない
- 生成アップスケールも生成塗りつぶしも生成クレジットを消費
- マークがついた生成機能はプレミアム クレジットを消費
生成クレジットは毎月付与されますが、付与される量は契約しているプランによって異なります。
| 契約プラン | 通常生成 クレジット | Premium クレジット |
|---|---|---|
| Creative Cloud Pro(旧コンプリートプラン) | 無制限 | 4,000 |
| Creative Cloud Standard | 25 | 0 |
| 単体プラン | 25 | 0 |
| Adobe Stock | 25 | 0 |
| Adobe Express Premium | 250 | 0 |
| Adobe Firefly Standard | 無制限 | 2,000 |
| Adobe Firefly Pro | 無制限 | 7,000 |
| 無料ユーザー | 25 | 0 |
生成アップスケールのクレジット消費量
生成塗りつぶしや画像生成はクレジット消費が1ですが、生成アップスケールは通常より多くのクレジットを消費します。
生成アップスケールの生成クレジット消費量は以下の通りです。
- Fireflyアップスケーラー
- 小〜中サイズ 5クレジット
- 大サイズ 10クレジット
- Topaz Gigapixel
- 小〜中サイズ 10プレミアムクレジット
- 大サイズ 20プレミアムクレジット
- Topaz Bloom:35プレミアムクレジット
Creative Cloud Proプラン(旧コンプリートプラン)であればFireflyモデルは無制限で使用可能です。
プランと追加購入
フォトプランやPhotoshop単体など低価格プランでは、月あたりのクレジットは少なめです。生成アップスケールを頻用するなら、上位のCreative Cloud ProやFireflyの追加プランを検討する価値があります。
上位プランでは標準世代がほぼ無制限になり、プレミア世代(Topazなど)用に数千クレジット付く構成もあります。
クレジットが無くなった時点で生成アップスケールは止まるので、どうしてもその場で続けたい場合は追加クレジットの購入が必要です。

節約のコツ
- スーパーズームやスーパー解像度などクレジット不要手段を試す
- プレミアムクレジットが不要なFirefly Upscalerを試す
- 最終出力がそこまで大きくないなら2倍に留める
- 本当に重要な画像だけGigapixel/Bloomに回す
特に、Topaz系はプレミアム生成クレジットを使用するため無駄撃ちしないようにしましょう。

解像度UP機能の違い・モデル比較
ここではPhotoshopや外部ツールで使える主要な「解像度を上げる」手段を、速度・品質・手軽さ・ディテールの質でざっくり比較します。
Firefly Upscaler


- 速度:クラウド処理のためローカルより遅め。ただし手順は少なく手軽。
- 品質:4倍でも過度な生成AI感が出にくく自然さと鮮鋭さを両立しやすい。ノイズもある程度軽減される。
- 向いている場面:少しだけ解像度上げたいとき、印刷用や大きなWebキービジュアルを作りたいとき、外部ツールを増やしたくないとき。
Topaz Gigapixel


- 速度:クラウド経由なのでやや待つ。
- 品質:ディテール最優先ならこれ。髪・布・建造物の細部などをシャープに保ったまま拡大できる。顔復元も得意。
- 向いている場面:写真の大判出力や低解像度の顔写真をなんとかくっきりさせたいとき。
- 注意点:プレミアムクレジットを消費する。一部、輪郭や質感が硬くなりすぎることがあるのでアップスケール後Photoshopで少しなじませると良い。
Topaz Bloom


- 速度:処理に時間がかかる。特に4倍+大きな元画像だと1〜3分ほどかかる。
- 品質:超低解像度でもきれいに整えてくれる。元にはなかった質感を足す力が強い。
- 向いている場面:超低解像度の解像度を上げたいとき。
- 注意点:クレジット消費が大きい、写真をそのまま大きくする目的にはオーバースペック。
バイキュービック(従来の画像サイズ変更)


- 速度:最速。ほぼ一瞬。
- 品質:拡大するとボケやすく、細部は増えない。
- 手軽さ:最高。どの環境でも使える。
- 向いている場面:数%〜1.2倍程度の微増、もともと高解像度な画像の微調整、Web用で拡大しない画像。
スーパー解像度(Camera Raw/Lightroom)


- 速度:GPUが効けばかなり速い。
- 品質:ある程度きれいな画像の解像度を少し上げる程度なら優秀。写真の自然さを保ったまま拡大できる。
- 向いている場面:RAW現像時に少し上げる場合、撮影時の解像度がやや足りなかった場合、印刷前にちょっとだけ大きくしたい場合。
- 向いていない場面:低解像度の画像に対しては効果が非常に薄い。作業が少し面倒。

スーパーズーム(ニューラルフィルター)


- 速度:倍率が低ければそこそこ、高倍率だと重い。
- 品質:バイキュービックより良く、AIがそれっぽく補完してくれる。顔強調などオプションもある。
- 向いている場面:生成クレジットを消費したくないとき。大量に似た処理をしたいとき。
- 向いていない場面:極端に拡大すると「AIで拡大した感」が出やすい。元のディテールが多く失われている場合は効果が薄い。

生成アップスケールのQ&A
- 生成アップスケールのボタンが表示されない
-
生成アップスケールの対応バージョンはPhotoshop 2026(v27.0)以降です。2025以前にはありません。必ず最新版にしておきましょう。
もしバージョンが新しいにも関わらず表示されないときはPCおよびPhotoshopを再起動してみてください。
- 1回でどのくらいクレジットを使いますか?
-
選んだモデルと最終的な出力サイズによって異なります。
- Firefly(Adobe標準機能)の場合:
- 5 クレジット = 1~9 メガピクセルのファイル
- 10 クレジット = 25~56 メガピクセルのファイル
- Topaz Labs(プレミアム機能、パートナーAIモデル)の場合:
- Topaz Gigapixel(最大 25 メガピクセルのファイル)= 10プレミアムクレジット
- Topaz Gigapixel(25~56 メガピクセル)= 20プレミアムクレジット
- Topaz Bloom(1~9 メガピクセル)=35プレミアムクレジット
Adobe標準のFireflyは生成回数無制限プラン(Creative Cloud Proなど)であれば回数制限なしで使用が可能です。階数無制限プラン以外の場合は上記の生成クレジットを消費します。
パートナーAIモデルのTopazを使用する場合はプレミアムが使用可能なプランでのみ使用可能で、通常生成クレジットではなくプレミアム生成クレジット10~35消費します。
- Firefly(Adobe標準機能)の場合:
- 対応バージョンと接続要件は?
-
Photoshop 2026(v27.0)以降でのみ利用できます。2025以前には搭載されていません。
また、クラウド側でAI処理を行うため、インターネット接続が必須です。オフライン環境では実行できません。Adobeアカウントへのログインも必要です。
- FireflyとTopazはどう使い分ければいいですか?
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生成クレジットを節約したい場合や自然で写真らしさを残したいときはFirefly、細部をもっとパリッとさせたいときや顔をはっきりさせたいときはTopaz Gigapixel、AIイラストや生成画像を「もっとリッチに」したいときはTopaz Bloomという使い分けがおすすめです。
- 4倍より大きくしたいときは?
-
生成アップスケールは1回で4倍までです。どうしてももっと大きくしたいときは以下の手順で更に大きくすることができます。
- まず生成アップスケールで4倍
- 一度書き出して、再度同じようにアップスケール段階的な運用になります。
ただし回数を重ねるほど「AIっぽさ」は少しずつ増えるので、品質に拘る場合は非推奨な方法となります。
業務利用などで高品質な印刷が求められる場合は最初から目的サイズに近い画像を用意するのが基本です。
- 元のレイヤー構造は残りますか?
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残りません。生成アップスケールは新規ドキュメントとして開かれます。複雑なレイヤー構成を維持したい場合は、先に統合画像を用意するか、生成後の画像を元ファイルにドラッグして使ってください。
- 文字やロゴがある画像でも使えますか?
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使えますが、AIが形を少し変えることがあります。ロゴや文字が厳密に同一である必要がある案件では、アップスケール後に文字部分を差し替える運用にしてください。
- 生成が失敗する・エラーが表示される
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ポリシーに抵触する画像、著名人の顔、権利的にグレーな素材などはクラウド側がブロックしてアップスケールできない場合があります。
また、Adobeサーバー上で処理を行うため、ネットワークが不安定なときもエラーになります。その場合は時間をずらして再実行してください。
生成クレジットが残っているか確認してください。また、Topazはプレミアム生成クレジットを使用するため通常生成クレジットだけになっていないか確認してください。
- 生成クレジットを節約するには?
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外部モデルのTopazは高価なプレミアムクレジットを消費するため、高品質なAI生成アップスケールを求める場合のみに使用すると節約可能です。
- 外部のTopaz Studioを別に買う必要はありますか?
-
Photoshopに統合されているTopazモデルを使うだけなら不要です。
ただし、プレミアム生成クレジットを消費するため「大量に処理したい」場合は、外部版を買ったほうがトータルで安くなることもあります。Topaz Studioは月額37ドル(約5,500円/月)ほどで無制限利用が可能なため毎月100回以上使用する場合のみ検討してみてください。
使用回数が少ないのであればPhotoshopからTopazを使用するのがおすすめです。
- 解像度が上がる際に異なるものが表示される
-
生成アップスケールは「写真の中に本当はあったはずのピクセル」を復元しているわけではなく、「こう写っていると自然に見える」というAIの推測を描いています。
そのため、人物のまつ毛や髪の毛、布の縫い目、背景の木の葉などが、元画像と異なる形で生成されることがあります。
特に注意したいのが元データからディテールが推測しにくい「テキスト」や「ロゴ」が写っている場合、形が大きく崩れることがあるので、必要なら拡大後に文字だけ描き直す・ベクターデータを上に載せるといった対処をしてください。

低解像度画像 
生成アップスケール後 
オリジナル画像 上図のように解像度が低ければ低いほどこの減少は顕著です。生成AIにより超低解像度画像からでもある程度綺麗にすることはできますがAIによる推測が強くなるので注意してください。
- 生成AI感が出てしまう
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Bloomのような創造性の高いモデルは「足りないものを丸ごと生成して補う」設計なので、写真のアップスケールに使うと質感や柄が増えすぎることがあります。
厳密性が重要視される写真にはFireflyかGigapixelを優先するのが良いでしょう。見た目のクオリティは生成AIによる補完が強いBloomの方がインパクトがあります。
- 生成できるサイズの上限は?
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モデルごとに出力の上限があり、Fireflyは最大6144 × 6144 px、Topaz Gigapixelは約56MP、Topaz Bloomは約9MPまでといった制限があります。上限を超えると倍率を落とすよう表示されます。
アップスケール後のファイルは非常に大きくなります。元画像が数MBでもアップスケール後は数十〜数百MBになることがあるので、保存場所・メモリ・バージョン管理に注意してください。
入稿用データでは高解像度が求められますが、過度に大きな画像を入稿するとトラブルの原因になることもあります。不必要に拡大しすぎないようにしましょう。

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